五月の樺の木

こんにちは。
東京はムシ熱い日が続いていますが、岩手はどうなんでしょうか。先週末岩手の春を満喫して帰ってきたばかりなのにもう岩手が恋しい「花鳥童話」が大好きな彩木香里です。

一本木の野原の、北のはずれに、少し小高く盛りあがった所がありました。
いのころぐさがいっぱいに生え、そのまん中には一本の奇麗な女の樺の木がありました。

こちらは、土神と狐の冒頭の一文です。

「樺」をwikiで調べると ↓ のように記載されています。

カバノキ属(カバノキぞく、学名:Betula)は、カバノキ科の1属。カバ・カンバ(樺)、カバノキ(樺の木)などと総称する。
木材としてはしばしばカバザクラ(樺桜)、あるいは単にサクラ(桜)とも呼ぶ。

これを見て、土神の狐に出てくる樺の木を「白樺」と思ってしまうのでしょうか。
台本(宮沢賢治全集)にはその先に
幹はてかてか黒く光り、枝は美しく伸びて、五月には白き雲をつけ、(青空文庫・白い花を雲のようにつけ)秋は黄金や紅やいろいろの葉を降らせました。
と書かれてあるのに‥‥。

以前、「調べたら幹が黒い樺もありました!」と言われて絶句してしまったことがありました。
確かにあります。じゃあ「白き雲」は?お空の雲かしら~?

まあ、成立します。
てかてか黒く光った樺からちっこい枝が伸びて、
空に浮かんだ雲が枝についてるように見える様子。
コレコレ・・・・。

宮沢賢治語彙辞典で調べれば一発なのですが、以前は語彙辞典で調べるという事をそんなに強調していなかったから、よくあることです。
語彙辞典で「樺」をひくと、
【植】ベチュラとも。落葉高木。カバノキ科カバノキ属の総称。ときにバラ科のサクラ属も入り、すべて落葉高木。共通する点は、樹皮に見られる横に長い皮目と枝の色と光沢。
小学館版「日本国語大辞典」に岩手県稗貫郡では山桜を差すとある。
栗原氏も賢治作品で単に「樺」とだけある場合「白樺」ではなく、特に花を取り上げる時は山桜、樺桜を差すと見て大体間違いないとしている。
童「土神と狐」の「綺麗な女の樺の木」はサクラをカバと呼ぶ好例だろう。

とありあます。

私も、綺麗な女の樺の木は「山桜」だと思います。
もしも、樺の木が「白樺」だったら、狐の嘘を見破り、土神の怒りを鎮める言葉を投げかけるキャラクターだったかも!
「山桜」の女性らしさがこの物語を悲劇へと導いていく、とても面白い作品です。

いつの時代も女性が憧れるのは、最先端を走っている狐のような男性で、
時代遅れで無骨な土神のような男性ではないのかな。
でもね、

たゞもしよくよくこの二人をくらべて見たら
土神の方は正直で狐は少し不正直だったかも知れません。

この一文、個人的にキュンとくる一文です。

土神も、狐も、ただただ正直に、自分の気持ちに正直に、生きただけなのに。
人間には狐のような面と土神のような面、どちらもあると思います。
賢治さんが描くキャラクターはいつも背中合わせのような気がします。
「裏と表」
それは決して「善と悪」ではないと…私は…おもふ。

長くなってしまいましたが、何が言いたかったかというと、
先日種山ケ原に連れて行ってもらった時に見た女の樺の木が

美しかった

と言いたかったのでした。